Noon Energy Inc. (US) が開発中の画期的な蓄電池が話題となっている。この蓄電池は、二酸化炭素を活用するという驚くべき技術を採用しており、エネルギー貯蔵における新たな可能性を切り拓くことになるかもしれない。
Noon Energyの作り出す”Carbon-Oxygen Battery”(直訳すると炭素酸素蓄電池か)は、フロー電池の構成でCO2を固体の炭素と酸素に分解してエネルギーを貯蔵する。このシンプルな化学反応をベースにした電池は、材料のシンプルさという観点だけでなく、エネルギー密度なども優れているという。
Noon Energy社は2022年1月に、長時間エネルギー貯蔵のための超低コスト、高エネルギー密度の”Carbon-Oxygen Battery”を商用化するためにシリーズAで2800万ドルの資金調達を実現した。本ラウンドは、Clean Energy VenturesとAramco Venturesの新しいSustainability Fundが主導し、他にも複数のクリーンテック・エネルギー関連のベンチャーキャピタルが参加した。
Noon Energyの考える”Carbon-Oxygen Battery”が実現すれば2つの重要な価値を持つことになる。
1つ目は「資源の持続可能性」という観点である。
”Carbon-Oxygen Battery”はCO2を分解することでエネルギーを蓄える。希少金属ではなく、自然界と同じ空気中に豊富に存在する分子で蓄電することができるため、蓄電池で将来懸念されるリチウム、コバルト等のレアメタルがほぼ不要となる。
2つ目は「高エネルギー密度」にある。
現在のストレージ技術の中でもエネルギー密度が高く、リチウムイオンバッテリーの10分の1のコストで長期保存が可能となる。更に3倍小さいコンパクトな設置面積も実現する。
しかし”Carbon-Oxygen Battery”の原理は公開されておらず、実現可能性を含めてまだ未知数な部分が多い。
一方でNoon Energy は2024年頃をターゲットに世界初の炭素-酸素電池を市場に投入して顧客に提供する予定である。この技術は、火星の二酸化炭素から酸素を取り出すNASAチームの一員として、CEOのクリス・グレイブスが開発に携わったMOXIE装置(Mars Oxygen In-Situ Resource Utilization Experiment)で、すでにNASAの火星探査車「Perseverance」に搭載されて実験されている。
最後に、Noon Energyの技術がエネルギー貯蔵業界やクリーンエネルギーの未来への移行に与える影響についても触れておきたい。
Noon Energyの技術が広く普及すれば、エネルギー貯蔵業界において、より持続可能で効率的なエネルギー貯蔵ソリューションが実現されることが期待される。
日本国内においても長期脱炭素オークション制度がスタートするなど、蓄電池等の貯蔵技術に対する期待値が上がっている。 まだ商用化は遠いのではという印象ではあるが、Noon Energy の技術の発展については目が離せない。
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